2023年12月7日木曜日

制限、禁止、ルール、マナー

今回は文章が長く、気持ちの良い話題ではないので、読みたいと思う方のみご覧ください。

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ある保護対象の生物が生息する、とある公園での2023年春の出来事です。その公園では、その種を守るために、一部の園路で「立ち止まっての撮影」や「観察と三脚の使用」で制限を一時期に設けています。園内各所に看板があり、来園者のほとんどの人がその注意書きの内容を毎年守っているのですが、その日は1組のご年配夫婦が三脚を据えて撮影をされていました。気になったので、私は歩行を続けながら少し様子を見ることにしました。


そのご夫婦は5分以上経過後も移動する気配がなく、ひょっとしたら看板表示されていることをご存じないのかもしれないと思い、ご挨拶をしてから「撮影を終えられたら、これ以上はお控えいただけませんか」とできるだけ丁寧に伝えた(つもり)ですが、旦那様がかなり大声の強い口調で、

「看板も見たよ!知っているよ!でもな、あれは “制限” であって、禁止ではないからな!」

という思いがけない言葉が返ってきて、一瞬言葉を失ってしまいました。我に帰って、多くの人がこの場での撮影や観察を自制している旨をお伝えし、その協力を改めてお願いしたところ、私を睨みつけて「もういい、行こう!」と吐き捨てるように言い、奥様とその場を去って行きました。奥様からは何も言葉がなく、私がものすごい悪いことをしたような感覚が心に残りました。


丁寧に伝えたつもりでしたが、ご本人にとっては私の言葉に印象の悪い言葉があったかもしれません。しかし、ルールを守らない人がこの場所で見られるようになれば、少しずつ状況が悪化していき、ついには守られないことにつながりかねません。念のため、公園の管理事務所に一連のことを伝えてましたが、“制限” 以上のことはできないとのことでした。

確かに、ご年配の方がおっしゃったように、制限は禁止と違います。また、ルールやマナーは最終的にはその人の考え方や判断に委ねられたものです。しかし、100%に近い人が守っている中で、守らない人が1人でも出ると秩序は乱れていくものです。長年、多くの人の良心によって節度ある状況にあっていたものが、たった一人の勝手な行為から崩れてしまうこともしばしばです。人として生きる以上、自分の土地ではない場所で、人として守るべきルールは当たり前のことは自覚し、間違っていたら正すことをお願いしたいものです。


近年は野鳥撮影などで自分の欲望を満たすためだけに行動する人が増えてきているように思え、危機感があります。もともと議論が上手な人間ではないのですが、どのように伝えれば納得してもらえるのか、こういう経験をするたびにわからなくなる私です。

栃木県ではこんなお願いを出しています。

↓野鳥観察・野鳥撮影についてのお願い


数年前に別の場所では、こんなこともありました。以前、自然環境保全のために立ち入り禁止区域になっているエリアでの生物調査を申請し、無事に受理されたので許可腕章をして調査をしていたときに、腕章なしで入っていたご年配の男性1名に会い、確認したら許可は得ていないとのことだったので、

「入口に札付きのロープが張られてお願いがしてあるように、このエリアは通常は立入禁止で入場には許可が必要なので、管理事務所から腕章を受け取ってから今後は入られることをお勧めします」

とお伝えしたら、

「そんなの関係ない。お前みたいな奴がいるから、ここの自然が壊れるんだ」

と、理解し難い反論をされ、呆然としたことがあります。


別の日に、同じエリアで調査機材のチェックで立ち入り許可の腕章をして保護区域に入ろうとした際にも、

「そこに入っていいと思ってんのか!俺たちは長年ここで鳥を撮影しているけれど、そこに入るのを我慢しているんだぞ!」

と、別人の男性2人組の野鳥カメラマンに少し離れたところから大声で言われました。お二人に私の腕章が見えなかったのだろうと思って、機材チェックを後回しにして一度彼らの元へ行き、調査を自分で企画して管理事務所に記録共有をするという手続きをして立ち入り許可を得ていること、同じように手続きをすればこの場所にお二人も入れることを出来る限りの穏やかな口調でお伝えしましたが、

「しがない年金受給者なので、そこまでする気はない」

と仰られ、この後の応対をどうしたら良いか困惑してしまいました。もちろん許可を得ているからと言って、何をしても良いということはなく、立ち入りには配慮が不可欠です。こちらに何か落ち度があればそれを聞きたいと言うと、急に口数が少なくなり、不満そうな顔でこちらを見続けました。


正当な手続きを経て許可を得れば誰でもできることをしない人が、その手続きをした相手に対してなぜこのような態度をとることをできるのか、理解に苦しみました。

その後、このような面倒なことにならないために人が極力少ない時間に調査をするようになりました。しかし、時間の制約ができたことで、効率はやや悪くなってしまいました。


ルールやマナーについて、基本的な考え方を言葉で具体的に表現するのは難しいのですが、相手に対して敬意を払うということから始まることだと私は思います。今回、私よりも長い時間を生きて多くの知恵や経験を持つ人からそれらを感じられなかったのは、とても残念でした。

多様な世代の方々が全国各地で献身的に環境調査をして、実直にデータ収集をしています。最近は様々な先進的な機材を用いて、新たな研究もされています。その方々がに立ち入り制限が設けられているエリアに入る光景を、皆さんもご覧になるこ機会があるかもしれません。不公平に感じることがあるかもしれませんが、専門的な調査と知識に裏付けられた彼らのデータがあることで野生生物や自然環境が具体的な記録として蓄積され、自然環境の保全や生物の保護が人知れず進んでいることを、このブログの訪問者の方々にはご理解いただければ幸いです。

また、私と同様の注意を善意で応対したことのある皆さんが、私のような事態に巻き込まれないことを願うばかりです。

最後まで読んでくださった皆様、本当にありがとうございました。

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