テレビのない我が家ではニュースをネットで見ることが増えましたが、こんなニュースが目に止まりました。上野動物園のツイートが反響だそうです。
9/12 登校迷う生徒「逃げて」上野動物園の公式ツイートが話題
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170912-00000015-nkgendai-life
上野動物園の公式ツイート(8/30)
https://twitter.com/UenoZooGardens/status/902783340360589313
「学校に行きたくなければ図書館に」という内容のニュースも以前に反響がありました。しかし、こういうツイッターや新聞記事は個人的には説明不足だと思っています。
学校に行きたくない理由は人それぞれだと思いますが、例えば「会いたくない人がいる学校」が嫌で動物園に「逃げたい」人がいるとします。しかし、その人が訪問した動物園に「会いたくない人」が来ていない保証は、実は「会いたくない人」に確認しないかぎり、どこにもありません。最近動物園は人気です。人がいっぱいです。会いたくない人が来ている可能性もかなり高いはずです。
そのため、「学校から逃げようとしている人」、あるいは、「学校から逃げようとしている人を知っている人」には、義務教育がどういうものであるかを伝えることがまずは必要だと感じます。
(※高校や大学、短大、専門学校などの教育機関は、自主的に選択して通っているので、行きたくなければ退学や休学し、行きたくなったら行きましょう。それで解決です)
以下、必要と感じた人だけ、お読みください。
まず日本国憲法を確認したいと思います。
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日本国憲法条文(抜粋)
http://www.mext.go.jp/b_menu/kihon/about/a002.htm
第二十六条
すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。
2
すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。
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最高法規である憲法において、本人には「等しく教育を受ける権利を有する」とあります。
教育を受けたいと思ったときに、保護者はそれを邪魔をしてはいけない(受けさせる義務を負う)ことを国が保障し、しかもその教育は国が無料で提供するといっています。昔は教育を受けたくてもそれができない子どもがいたので、こういう文言が入ったのだと思います。
繰り返しますが、本人にあるのは「教育を受ける権利」です。「義務教育を受けなければいけない義務」はどこにも書いてありません。
次に教育基本法も確認します。
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教育基本法資料室へようこそ!
第4条 (義務教育)
http://www.mext.go.jp/b_menu/kihon/about/004/a004_04.htm
第二章 教育の実施に関する基本
(義務教育)
第五条 国民は、その保護する子に、別に法律で定めるところにより、普通教育を受けさせる義務を負う。
2 義務教育として行われる普通教育は、各個人の有する能力を伸ばしつつ社会において自立的に生きる基礎を培い、また、国家及び社会の形成者として必要とされる基本的な資質を養うことを目的として行われるものとする。
3 国及び地方公共団体は、義務教育の機会を保障し、その水準を確保するため、適切な役割分担及び相互の協力の下、その実施に責任を負う。
4 国又は地方公共団体の設置する学校における義務教育については、授業料を徴収しない。
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教育基本法の義務教育部分を読んでも「生徒は学校に通う義務を負う」とは書いてありません。都合良く大雑把に解釈するならば、「学校に行く必要を感じたときに学校はいつでも無料で迎え入れます」というのが、教育基本法の立場です。
「受けさせる側の義務」について述べており、受ける側には何も義務はないのです。つまり、「学校に行かない」という選択をしたとしても、それは本人の自由です。
ただ、現在の学校には、
“義務教育を受ける権利のある人が、学校にいないときも健やかである”
ことを確認する役割もあるようなので、もし「学校に行かずに動物園に行く」ならば、動物園に行くという “お知らせ” はしておくほうがよいと考えます。つまり、学校に説明をせずに動物園へ行ってしまうことからは「逃げ」ないほうが得策でしょう。
また、もう一つ覚えておいてほしいことがあります。
動物園は動物を展示している場所であり、飼育員が働いている職場です。小さな頃から動物園へ行っている私にとって、動物園とは動物のことや飼育員さんの苦労などを聞くこともでき、豊富な知識を得られる場所です。私の経験上、こういう場所は『逃げ場ではない』という認識のほうがいいと思います。
動物園に行くと、動物たちの大きな声がしたり、ウンチの臭いが漂ってきたり、肉食動物用の餌として入れられたヒヨコが檻の中で転がっていたりして「逃げて、なんとなく、のんびりと過ごす」には刺激の多すぎます。
そのような理由から、動物園は、私の中では「逃げる先」に向かないという印象です。
さらに、そもそもの問題ですが、人が働いている場所を「逃げ場」にしないほうが賢明です。例えば工事現場が好きだからといって、突然建設現場に行って「学校から逃げてきました」なんて言ったら、大抵はものすごい剣幕で怒られ、かえってへコむでしょう。
「職場に行く」ことは、将来ひょっとしたら自分がそういう場所で働く可能性もあるので「なんとな〜く過ごす」のは、非常にもったいないと思います。「職場」には目的意識を持っていくほうが多くのことを知ることができるはずです。
学校から「逃げる」にしても、その先が適当かどうかはツイッターにあったからと言って、安易に決めないほうがいいと思います。
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「学校以外に学びの場はたくさんありますよ」と、大人たちは平気でいいます。すごく簡単に、そして無責任に言います。でも、それをいざ学校に行かずに選択しようとすると、大人たちは急にいろいろ面倒くさいことを言ってくることが多いです。
そこで、「学校へ行かない」という選択をするときは多少のプロセスが必要です。
そのプロセスとは、面倒くさがらずに『手続き』をすること。多少手間がかかりますが、手続きを経て得たことは自信につながりますし、無責任な大人たちに惑わされずに、将来役に立つことをたくさん学べます。
私は子どものころ、鳥のことをたくさん教えてくださる方から「石川県の舳倉島に渡り鳥を観察しに行かないか」というお誘いいただき、日程をうかがったところ、平日に一日学校を休まなくてはいけないことが判明しました。そこで事前に
「鳥を見に行くので平日に休みます」
と担任の先生に伝えましたが許可をしないと言われ(そもそも許可しないということが間違いなのですが)、父に校長先生宛の手紙を一筆書いてもらい、堂々と一日休んだことがあります。
「堂々と休む手続き」をしたこの経験は、その後鳥を観ることを自分の人生のプランに入れる自信にもつながっていきました。
自分の持つ権利についてしっかりと考えて、堂々と行きたい場所へ行ってほしいと思います。学校へ行かずに動物園に行くならば、堂々と動物園の門をくぐるための手続きを踏みましょう。
しつこいようですが、改めて、繰り返します。学校は、もともと「強いて居なければいけない環境」ではありません。したがって、そこから「逃げる」という概念そのものがあてはまりません。行きたくなければ、行かなくていい場所です。行きたくないと思い悩む必要が元々ないのです。
学校は、行きたいときに行けばよい場所です。
国はそれを憲法という最高法規で保障しています。
お忘れなく。