2024年2月1日木曜日

松田道生さん

野鳥の声の録音家として知られる松田道生さんが、2023年12月16日に73歳で亡くなられました。BIRDER編集部在籍時に初めてお会いし、退職後も野鳥や自然環境に関わる業界で生きていくための多くのアドバイスをくださいました。

心よりご冥福をお祈りいたします。

初めて編集部でご挨拶した時の第一印象は「なんて心が清らかな方なのだろう」というものでした。謙虚な応対をごく自然な振る舞いとされている姿に、私は深く感銘を受けました。文章も会話も同世代から聞くことがない気品に満ちた言葉に溢れ、日本語の麗しさも教えていただきました。

フリーランスになってからは、私の不躾なお願いにも本当に丁寧に応えてくださいました。藤沢市で友人と聞いたオオセッカの声の録音の確認もいただき、日本野鳥の会神奈川支部のBINOS 第27集への発表をすることができました。

↓syrinxブログ ほぼ野鳥録音の話:日本野鳥の会神奈川支部の「BINOS 第27集」

http://syrinxmm.cocolog-nifty.com/syrinx/2020/12/post-1ecf85.html

フィールドでのタイマー録音で正体不明の声が入っていたときには、可能性のある生き物について情報交換をすることもありました。録音のご経験と生き物への知識は誰よりもある方でありながら、私のような若輩者の生意気な意見にも耳を傾けてくださったことが、本当に嬉しかったです。

イベントでお会いした時などに帰る方向が同じだったときは、私は図々しく一緒に電車に乗ってそばに座ってお話を伺うのが楽しみでした。そんな私に鳥に限らず楽しい話題を提供くださり、電車を降りる際には「またこんな話をたくさんしましょう!」と、あの素敵な笑顔で手を振ってくださいました。

バードウォッチングの醍醐味と野鳥を識別するおもしろさは、身近な野鳥をじっくり観察することから始まるとお話くださったことは忘れることのできない大切な思い出です。

珍鳥や見たことのある種類が多いことがバードウォッチャーのステイタスと捉えられがちな昨今ですが、このお話を伺って身近な鳥を観察する自分のスタイルに自信を持つことができたことをはっきりと覚えています。

治療薬の投与でお身体に長きに渡るご負担が続く状態ながらも体の調子が良い時にご連絡をいただく機会もありました。ご自身が闘病中にもかかわらず私が長年患っているアレルギーの状況をご心配くださる、本当に心のお優しい方でした。


とあるコンタクト時のメールの文末に「毎日できる限り歩いて食べるようにしているので、見た目は元気ですよ」とのことで、私はてっきり、日々、外の風や野鳥の姿を楽しんでおられていると思っていましたので、突然の訃報に言葉を失ってしまいました。

今は蒲谷鶴彦先生と世界中の鳥たちの声を聞きに飛び回り、野鳥の録音のお話で盛り上がっていることでしょう。お通夜には多くの方が参列されて、その中で私も精一杯のお礼をお伝えしました。

本当にお世話になりました。

本当にありがとうございました。

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